ビートルズの本質を表す「ラバーソウル」というタイトル

ビートルズが1965年に発表した「Rubber Soul」のタイトル名に関して有名なエピソードがある。
アメリカのブルースマンが、ローリングストーンズの音楽をプラスティックソウル(偽りの黒人音楽、あるいは偽りの魂)と揶揄したのを聞いて、ポールが、じゃあ僕たちはラバーソウルだと言って面白がってつけたというのだ。

ラバーというのは、ゴムのこと、そして、ゴムはどんな形状にも変化する素材。
僕はこの「Rubber Soul」というタイトル名は、ビートルズというものの本質を言い当てている絶妙なタイトルだと思う。

このアルバム以降、ビートルズは、様々なジャンルの音楽を作ろうとした。
そして、彼等4人は、自分達の固定的なスタイルを、常に変化させ続け、あたかもゴムのごとく、様々なスタイルに変わって見せた。
逆にいえば、ビートルズは、「これがビートルズの音楽である」という定義を、常に壊し続けたのだ。
おそらく、その壊し続けようとした精神こそがビートルズの本質なのである。
だから、この「Rubber Soul」は自分達は、これからは、どんなスタイルにでもこなしますよ、どんな曲もつくりますよということの前向きな宣言なのである。

しかし一方では、そのタイトルにはビートルズの黒人音楽に対する複雑な想いを読み取ることも可能ではないだろうか。このタイトルには、自分達が黒人っぽい音楽をすることによって逆に黒人達のアイデンティティを脅かしかねないという遠慮、やはり本物のソウルには敬意を表したいという愛情、一方ではその本物さにはかなわないというコンプレックス等々、複雑な心理も見え隠れしているのだ。(画像はリトルリチャードと記念撮影するビートルズのメンバー)

実はこの頃、ポールはこんな過激な発言も残しているのだ。
「そのうち、きっと黒人がこの国を支配するようになると思いますよ。そうなれば、彼等は自分達が迫害されたように白人を迫害しますよ。残酷に聞こえるかもしれないけど、それが当然の成り行きでしょう」

Rubber Soul」のっけの「Drive My Car」。モータウンサウンドばりのイントロにビートルズ、特にポールが意識していたこの頃の時代状況が表現されているといったら言いすぎだろうか。
50年代、黒人による黒人のための音楽だったロックンロール、それをいち早くイギリスの地で取り入れて60年代に、白人による白人のためのロックンロールをアメリカに逆輸出したビートルズ。

このアルバムが発売された1965年頃は、ジョンの「ビートルズはキリストよりも有名」発言によって、アメリカの保守的な中南部、いわゆるバイブルベルトにおいて、ビートルズの排斥運動が起きている。
おそらく、その背景に、黒人風音楽を奏でる異国の白人のボーイズというビートルズの「鵺」的怪しさに対する拒絶感情があったのかもしれない。

そういえば、アメリカにおけるロックンロール=黒人音楽という図式とパラレルに存在した、イギリスにおけるロックンロール=労働者階級の不良の音楽という図式を破ったのもビートルズだった。
ビートルズはそのデビューに際して、リーゼントをマッシュルームに替え、皮ジャンを襟無しのハイスクールジャケットに替え、ステージ上での行儀の悪いパフォーマンスを深々としたお辞儀に替えることによって、中産階級の女の子達、すなわち「She’s Leaving Home」で歌われているような娘達のアイドルになったのである。

いい意味で、自分達の固定的な居場所を持たなかったビートルズ。複数の文化圏、階級をクロスオーバーさせて憚らない、彼等独自の自由な感性。
常に変り続けること、自由であり続けることをアイデンティティとした彼等の思想を育んだ原点は、労働者階級として生れながら、中流から上流への志向性が強かったミミおばさんの家で育てられたビートルズのリーダー、ジョンの特殊な生育環境にあったのかもしれない。

しかし、「Rubber Soul」の中の秀曲「Nowhere man」=「どこにもいない男」はそんなビートルズの”自由”を表していると同時に、居所の無い”孤独”をも表しているように思えるのである。

ビートルズと孤独というテーマに関しては、また改めて考えてみたいと思う。

まさむね

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