ジョージの未発表歌詞は1967年物だからこそ興味津々

先日、YahooNewsでジョージハリソンの未発表歌詞が発見されたというニュースがあった。

故G・ハリスンの未発表詞、アビイ・ロードで見つかる
[ロンドン 8日 ロイター] 元ビートルズの故ジョージ・ハリスンが1967年に書いた未発表の歌詞が、ロンドンの「アビイ・ロード・スタジオ」で見つかり、大英図書館で展示されている。
 この歌詞はハリスンが23歳か24歳の時のもので、ビートルズがアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の制作に向け、同スタジオを中心に活動していたころに書かれたとみられる。
 ビートルズ公式伝記の著者ハンター・デヴィス氏が、同書の改訂版執筆のリサーチ中に、スタジオの床に放置されていた紙くずの中から見つけたという。
 題名がない8行の歌詞には、漠然とした不安などがつづられている。

 

歌詞の内容が「漠然とした不安」という。興味津々だ。というのも、その詞が書かれたのが1967年だからである。
もともと、寡作のジョージはこの年、4曲しか作って(レコーディングして)いない(と思う)。
レコーディングの日順に言えば、以下の4曲だ。

1967年2月13日 Only a Northern Song
1967年3月15日 Within You Without You
1967年5月25日 It’s all too much
1967年9月06日 Blue Jay Way

自身の曲が3曲も収録され、大活躍の「Revolver」を出した1966年、インドに行き、「While My Guitar Gently Weep」という傑作が生みだす1968年の間に挟まれたジョージの1967年。
僕の印象だとジョージにとって谷間の年にあたる。
逆にこの年はポールにとっては、アドレナリン大放出の年で、「SGT. PEPPER’S LONELY HEARTS CLUB BAND」「MAGICAL MYSTERY TOUR」を主導し、次々と傑作を生み出すだけではなく、実質的なリーダーの役割も積極的に果たすようになっていったのである。
その影で、ジョージは、ビートルズの一員としての活動よりも、インド音楽に傾倒、東洋哲学に興味を示していくのだ。

確かに、「SGT」におけるジョージの影の薄さは尋常ではない。自身の曲は一曲に抑えられただけではなく、アルバムテーマ曲の「SGT」や「Good-Morning Good-Morning」等では聴かせところであるリードギターソロをポールに奪われている。しかも、ジョンの名作「Being For The Benefit Of Mr.Kite」ではバスハーモニカ、「A Day in the Life」ではマラカスなどというどう見てもマイナーな楽器を持たされているのだ。しかも、「A Day in the Life」のあるテイクでは「マラカスの音が大きすぎる!」とジョンに叱られている有様だ。(そういう音源が残っている)

そんな、この年のジョージ。4曲の主題もどちらかといえば、ネガティブな感じなのである。歌詞の中身を深読みすると、特にポール、そしてジョンに対してさえも、微妙な敵意を持っているとすら僕には思えるのだ。具体的に見てみよう。

Only a Northern Song

ここで歌われているNorthern Songとは当時ビートルズの楽曲を管理していた会社。ビートルズが売れても、富はこの会社に吸い取られる状況をジョージが皮肉っているというのが一般的な解釈だが、僕はそれに加えて、ジョージのポールに対する若干の悪意を感じるのだ。

If you think the harmony
Is a little dark and out of key
You’re correct There’s nobody there
And I told you there’s no one there

この曲のハーモニーをなんだかあいまいで調子っぱずれだと思うんなら 君は正しいのさ
そこには誰もいないんだ わかったかい そこには誰もいないんだ

この「曲にその作者が不在」という批評は実は、ジョージがポールの曲に対して持っていた疑念なのである。例えば「PaperBack Writer」「Lady Madonna」「Rocky Racoon」等、ポールの作品は、物語としては成立しているが、ポール自身の思想、人生が投影されたものかと言えば、そうではない。ポールは超一流のエンターティナーとも言いうる反面、「浅い」といえばそうかもしれないもう反面を持っているのだ。
しかし、これが、ポールのスタイルなのである。
おそらく、この頃、ジョージは、ポールの湯水のように溢れるエンターティナーとしての才能に対して「深さ」「哲学」で対抗するしかなかったのではないか、というのが僕の「深読み」である。

Within You Without You

全編、哲学的な歌詞の雰囲気の中にこういう箇所がある。

the people-who hide themselves behind a wall of illusion never glimpse the truth
幻想の壁の陰にじっと身を隠した人々彼らは真実を見つめようとしない

僕はこれは、ポールが「Fix A Hole」であらわした次の一節への反論だと見ている。

See the people standing there who disagree and never win And wonder why they don’t get in my door
あそこに立っている連中をごらん むなしく意見を闘わせながら自分たちが僕のドアに入ってこない理由を考えあぐねている

It’s all too much

ジョンが作った「All You Need is Love」のアンチテーゼとも取れる内容だ。

It’s all too much for me to take
The love that’s shining all arund you

そんないっぱい受け止めきれない
君のまわりに光り輝く愛

It’s too much…..It’s too much
息が詰まりそうだ。うんざりだよ

ジョージ特有のシニカルさが、ジョンに向けられていると言ったらいいすぎだろうか。作られた時期が微妙なので製作時の話ではないのだが、この曲の冒頭の「To Your MO」(お前の母親へ!)という叫びは、この曲をアルバム「Yellow Submarine」に収録する時点ではYou=ジョン、MO=YOKOにあてつけたのではないか?というのが僕の推理である。
それにしても、愛と平和のこの1967年にはあまりふさわしくないネガティブな歌詞なのである。

Blue Jay Way

歌詞の内容は本当に凡庸である。友達を待っていてなかなか来ない。夜が明けちゃった...
それだけなのである。音はともかく、詞的には残念ながら、ビートルズで1位2位を争う低レベルの内容だと僕は思う。(ごめん、ジョージ!)とにかく、他人に対する不満だけの内容なのだからしょうがない。
       ★
1967年のジョージ。スランプという言い方をする評論家もいるこの時期だから、こそ、僕は彼の未発表歌詞の内容が気になって仕方が無い。
実を言うと、この時期の彼が抱いていた悪意と微妙にシンクロする僕の心の中にある意地悪な気持ちが黙っていないのである。
人間というのはいろんな面がある。当然だ。そして、そういったいろんな面をそっとしておいてくれないでいじくりまわすというのも、芸術の役割である。
そして、そんな役を、おそらく無意識的に引き受けさせられた1967年のジョージ。それはそれで僕はいとおしい。

まさむね


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