ジョンのビートルズ時代の歌詞に見る女性観の変遷

ジョン=レノンの女性に対する複雑な想いはその歌詞の変遷に現れている。

初期には、女性に対する激しい嫉妬心、攻撃性がストレートに表現されている曲が目立つ。
アイドルが作る歌にしてはきわめて過激な歌詞が散見されるのだ。
代表的なのが、「I’ll Cry Instead」「You Can’t Do That」などだ。(以下、日本語は内田久美子訳より引用。)

I’ll Cry Instead
And when I do you’d better hide all the girls,
’cause I’m gonna break their hearts all ’round the world.
Yes, I’m gonna break them in two,

そのときは、女という女を隠しておかないと
世界中の女の心を傷つけてやる
ハートを真っ二つに引き裂いて恋に狂った男のパワーを見せつけてやるんだ

You Can’t Do That
I got something to say that might cause you pain,
If I catch you talking to that boy again,
I’m gonna let you down,
And leave you flat, Because I told you before, oh, You can’t do that.

ご機嫌をそこねるかもしれないが 言っときたいことがある
あいつとは二度と口きくんじゃない
今度見つけたらとっちめてやる
コテンパンにしてやるからな
前にもはっきりいったはずだ そんなことするなって

そして次の傾向として見られるのが、男性を振り回す女性の歌だ。「Rubber Soul」に収録された「ノルウェイの森」や「Girl」に出てくるどちらかといえば神秘的な女性を歌詞にするようになるのだ。

Girl
Is there anybody going listen to may story
All about the girl who came to satay
She’s the kind of girl you want so much it makes you sorry
Still you don’t regret a single dayAh, girl, girl,girl


誰か 僕の話を聞いてくれないか
僕が離れようにも離れられない女の子の話さ
悲しくなるほど思い焦がれて
それでもかまわないと思わせるような娘なんだガール 僕を悩ますあの娘

Norwegian Wood
I once had a girl
Or should I say she once had me
She showed me her room
Isn’t it good, Norwegian wood

あるとき 女を引っかけた
いや こっちが引っかけられたのか
彼女は僕を部屋に招いた
ノルウェーの森にいるようだぜ

ここには女性に対する敵意というよりも、ある種、憧れのような想いを感じ取ることが出来る。後日、ジョンはこの「Girl」で歌われた女性を、その時点ではまだ見ぬヨーコのことだったと告白している。

そしてその後、1966年~1968年頃の詞を見ると、自分の内面の敵意を「架空」の女性に向けるというジョン=レノン独特の時期が訪れるのだ。
それが、「She Said She Said」「Sexy Sedie」そして、「The Continuing Story Of Bungalow Bill」である。
ご存知の通り、「She Said She Said」は「Revolver」に収録されたジョンらしいロックンロールナンバーだが、LSDでトリップしていた時に俳優のピータ・フォンダに「死ぬってことはどういうことか知ってるよ」って話し掛けられて不快だった時のことを歌にしたという。しかし、ジョンはここで男優のフォンダを「She=彼女」として非難しているのだ。
また、同様に、「Sexy Sedie」。マハリシ・ヨギというインドの導師のセクハラ問題に怒ったジョンが作ったミドルテンポの名曲であるが、ここでもマハリシをSedieという女性名の人物に置き換えて非難しているのである。
さらに、「The Continuing Story Of Bungalow Bill」では、虎を殺すハンターの母親を残酷な役を与えているのだ。

The Continuing Story Of Bungalow Bill
The shildren asked him if to kill was not a sin
“Not when he looked so fierce”, his mommy butted in
“If looks could kill it would have been us instead of him”
All the children singHey, Bungalow Bill
What did you kill Bungalow Bill

子供たちが彼に尋ねた ゛殺すことは罪ではないの?゛
お袋さんがすかさず口をはさんだ ゛相手が狂暴そうなときは別よ
もし凄んだ目つきで相手を睨み殺せるなら今頃死んでるのは虎じゃなくて私たちだったわ゛
子供たちは声を揃えて歌うよヘイ バンガロウ・ビル
何を殺してきたんだい
バンガロウ・ビル

この時期、ジョンはヨーコと出会い、子供の頃に母親に捨てられたというトラウマを徐々に癒しつつある時期ではあるが、それでも、この傲慢なアングロサクソンの母親のパーツを東洋人のヨーコに歌わせているところに、複雑な心境を感じ取ることが出来る。
また、「Sexy Sedie」「The Continuing Story Of Bungalow Bill」が収録されているホワイトアルバムには不気味な「Cry Baby Cry」という曲も入っている。僕には、この曲は、「赤ん坊よ、自分を生んだ母親へ復讐しろ」というように聴こえる。ジョンの最も暗い一面が現れている不気味な曲である。ちなみに後日、ジョンはこの「Cry Baby Cry」を駄曲として切り捨てている。

そして、ビートルズの最終章のジョン。ここでの女性に対する代表曲が「I Want You」だ。勿論、ここで彼が歌う女性とはオノ・ヨーコのことである。そこには、シンプルな歌詞に、ひたすら彼女(=ヨーコ)を求めるストレートな心情を汲み取ることが出来る。ここまでストレートなラブソングを僕は他には知らない。さすがジョンだ。

I Want You
I want you
I want you so bad
I want you
I want you so bad
It’s driving me mad, it’s driving me mad

お前が欲しい
お前が欲しくてたまらない
お前が欲しい
お前が欲しくてたまらない
気が変になるくらい 気が変になるくらい

一般的に天才は、1)オリジナリティ、2)新奇性、3)正直さが、他の人々に比べて優れていると言われているが、ジョン=レノンはその中でも3)正直さが群を抜いている。
聴けば聴くほど、その奥深さを感じさせるビートルズの秘密は、このジョンの正直さも大きな要因だと僕は思う。

まさむね

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