若い世代がビートルズをどう感じているのかを知りたい

ビートルズを若い世代の人々はどのように受け止めてどのように評論するのだろう。
僕にはそんな興味がずっとあった。

確かに、星加ルミ子さん、湯川れい子さん、今野雄二さん、渋谷陽一さん、萩原健太さんらの先人達がビートルズを語ってきた功績は大きい。
各々、ビートルズ論やレポートには定評があるし、それらが書かれた時代の空気をそれぞれ上手く汲み取った文章に、僕らはその時々胸をときめかせたものだ。

しかし、ビートルズが解散して早くも40年が経とうとしている。
これは圧倒的に長い時間である。
かつて、ニーチェは真理とは擦り切れたメタファーであると語ったが、僕が最近思うのは、僕も含めたおじさん、おばさんの世代がビートルズを語る言葉もだんだん「擦り切れてきた」のではないかということだ。
だからこそ、僕は、今の感性で書かれた、擦り切れる前のビートルズ論が読みたいのだ。
       ★
最近、ミュージックマガジンが創刊40周年をむかえてこの40年間の「アルバムランキンキングBEST200」というムック本を出した。
一位はビートルズの「Abbey Road」である。
文章は萩原健太氏。手元にその本がないので、立ち読みの記憶で書かせてもらうと、やっぱり「Abbey Road」が一位に来ることによってランキング自体が落ちつくというような内容だったと思う。
その通りだ。しかし、同時に、その評論を萩原氏が書くというのもいかにも「落ち着いた」感じがする。

おそらくこうした音楽誌のターゲットユーザーは高いのだろう。
マーケッティングの結果としてこういった「落ち着き」が必要というのはわかるような気がするのだが、その「想定内」な感じは、常に新しいものを求め続けながらもトップでありつづけたビートルズを語るには、逆に最もビートルズ的ではないという皮肉の一つも言いたくなってしまった。
       ★
そんな時、本屋で「SNOOZER」の21世紀のビートルズが目に入り、衝動買いをしてしまった。
特集の冒頭の文章にはこのように書かれている。

(前略)
「21世紀のザ・ビートルズ」-今回の特集は、ビートルズを今に取り戻すためのものだ。そして、ビートルズを今に取り戻すこととは、すなわち、豊饒な未来を手に入れることにほかならない。我々はそう信じて疑わない

この特集では、ビートルズの全曲に対して10点満点で採点している。
そして、その評価の基準に関して、次のページでこう続ける。

その評価におけるポイントは次の4つ。まず一つ目は、とにかく大胆にやること。客観性を意識したり、バランスを取ろうとしないことだ。
そして、二つ目は、2000年代前半に巻き起こった、ストロークスを筆頭とする何度目かのロックロール・リバイバルを音楽的な原体験にもつ、若いリスナーの価値観を出来るだけ反映すること。
そして、もう一つは、出来るだけ、おそらくは現在、大勢を占めていているだろう一般的評価に楯突くこと。
そして、最後の一つは、出来る限り、リリックを重視すること。この理由は、ここ日本でのビートルズの評価がどちらかというと、音楽面に拠ったものになりがちだという意識からだ。

1曲づつの星の数は本誌を見ていただくとして、上記に引用した4つのポイントがその評価にいかに反映されたのかが不明確なのが残念である。今度、中山康樹氏が書いたような新しい世代の「これがビートルズだ」を読んでみたい、是非。

しかし、それでも、「Tomorrow Never Knows」や「Happiness is a Warm Gun」「All you need is Love」「I am the Warlus」といったジョンの「変な」歌が10点満点なのに対し、ポールの「Maxwell Silver Hammer」「She’s leaving Home」「When I am 64」といった物語系の歌の評価が6点というところに現代の傾向を感じた。
またアルバムで言えば、「SGT Pepper’s lonely hearts club band」や「Abbey Load」よりも「The Beatles」や「Revolver」の評価が高いのも最近の傾向なのだろう。

90年代、00年代の音楽シーンを踏まえたビートルズへの評価は、僕自身そういった音楽シーンに関して全く無知なだけに、逆に大変興味深い。
この特集で最高の評価を受けていたホワイトアルバムをこう評されていたこの言葉、そして発想...
ロック史が苦手な僕の中からは全く出る可能性のない一言だ。納得、そして感心した。

「ペパーズ」や「アビーロード」を模した傑作は、その後もいくつも産み落とされることになったが、全30曲に及ぶ長尺の傑作アルバムは、この作品以降、一度たりとも生れていない。

さらに、「My Favorite 10 Beatles Songs」のコーナーではこう語る。

ビートルズとはレノンの声であり、ナンセンスとシニシズムであり、ヴァルネラビリティとサーカシズムであり、スターのドラムであり、ハリソンの曲の不思議なコード進行であり、所在なげな佇まいであり、余計なくらい広すぎる音楽的引き出しであり、ジョージマーティンの的確すぎるサポートであり、だが時として余計なおせっかいであり、だが、やはりレノンとマッカートニーを繋いでいた世界中の誰よりも優れた存在でいようとする底なしの野心であり、二人の間の熾烈な競争であり、それを可能にしていた友情の深さに他ならない。

僕は、ヴァルネラビリティ(脆さ)、サーカシズム(嫌味)などの意味がわからなかったが、調べながら、そしてうなずきながら、読んでしまった。「底なしの野心」とか「友情の深さ」というのもわかる、わかる。

この雑誌の編集長の田中宗一郎(タナソウ)。意外に高齢だが、只者ではない。

まさむね

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