AKB48と西行法師は繋がっていたのかという感動

AKB48の「桜の木になろう」がまたまた大ヒットだ。デイリーで65万枚というのは、最近のCD不況を考えれば、凄いを通り越して異常ですらある。

この人気を一概に握手券作戦の成功などというマーケッティング的(日経エンタ的)なオチで片付けるのはどうかと思う。僕らはおうそういった凡庸な話には飽き飽きしているのだ。

この曲のPVを見て、この曲を聴いてみれば、そこには僕ら日本人普遍の琴線に触れる作品であることがすぐにわかる。

今更ながら、プロデューサーで作詞者の秋元康氏はやはり只者ではない。

そういえば、今までも、AKB48は毎年、桜ソングを発表している。2009年には「10年桜」、そして2010年の「桜の栞」、そして「桜のはなびらたち」という曲もあった。

しかし、今までの桜ソングが、普通の卒業ソング、つまりありふれた過去を思い出すために桜を持ち出す類の曲だったのに対して、この「桜の木になろう」は、死んでしまった昔の友達が桜の精となって、残ったみんなを見守っていくという、今までよりもさらに一歩、日本の伝統譚に踏み込んだ内容なのである。

実は桜という花は日本人にとって、一番、好まれている花であると同時に「死」というものに近い花でもある。ある意味、死の象徴といってもいい。古くは「古事記」に登場するコノハナサクヤ姫。天孫降臨で日本の地に降りてきたニニギノミコトは、桜の精であるコノハナサクヤ姫“だけ”を妻とするという「罪」によって、その子孫(天皇、そして日本人)は永遠の命を断念させられるのである。つまりこの話は、桜の美しさの裏側には、儚さという死がはりついているということなのである

また、平安時代末期の歌人・西行は、「ねかはくは 花の下にて 春死なん その如月の 望月のころ」という歌を詠んだ。つまり、満開の桜の木の下で死ぬことによって、桜の木に生まれ変わろうとしたのだ。

さらに時代が下って、能楽師の世阿弥も「西行桜」や「忠度」という作品の中で、死者が桜の木を通して現世に姿を見せるというような内容の劇を作っている。

勿論、桜=死という観念は、明治以降、戦前の国家主義的イデオロギーに利用されたという見方もあるだろうし、それとは別だが、同時代には、「桜の樹の下には死体が埋まっている」と書いた梶井基次郎にも桜=死という観念は受け継がれている。

家紋界において、桜は、日本の国花ともいえる存在のわりには意外に広まっていないというのも、どこか不吉な匂いのする桜という植物が、家運繁栄を託す家紋というアイコンには採用されなかったからというのが通説である。ちなみに、「君死にたもうことなかれ」と詠んだ与謝野晶子、「死霊」の作者・埴谷雄高、暗殺された平民宰相・原敬は桜紋である。

さて、話を戻す。そして、今年の春にはAKB48の「桜の木になろう」である。数年前に大ヒットしたORANGE RANGEの「花」の中にも「生まれ変わってあなたのそばで花になろう」という西行のセンスを踏襲した大ヒット曲があったが、今回のこの曲もまさに日本の伝統にそっているということに僕は感動を覚えずにいられない。

このPVは最初、墓参りのシーンから始まる。アイドルのPVが墓場からというのも凄い。勿論、墓マイラーである僕は大歓迎であるが。

そして、その後、死んでしまった「彼女」を思い出す、あるいはその死の痛みを思い起こさせる暗喩的シーンが続く。まさに、奥ゆかしく。

さらに、現在、生きて、それぞれの人生を歩んでいる女の子達、ある娘は恋に悩み、ある娘は母として子供を育てる、別の娘は大学受験に挑戦し続け、また別の娘は自分の好きな絵をあきらめ、就職し孤独を感じ...そんなそれぞれの今を生きる娘達のそばにはいつも、死んでしまったあの「桜の精」が優しく見守っているのである。

おそらく、「日本人」であれば、このPVを見れば誰でも、理屈ぬきに納得してしまうであろう。不気味だとか、不思議だとか、幻想的だとかよりも、むしろ自然に感じるのではないだろうか。

尖閣を守ろう、外国人参政権を阻止しようというのもわからないでもない。

しかし、日本の伝統というのは、決して、そういった政治的なもの、そして茶道や華道や柔道や神社仏閣、歌舞伎や芸者など、目に見えやすい「文化」にあるわけではない。

このPVの中にこそあるのだと僕は思う。

AKB48と西行法師は明らかに繋がっているのだ。それこそ僕らは誇るべきなのではないだろうか。
「KARA」や「少女時代」には決して歌えないこのような歌を歌っている限り日本のアイドル界は大丈夫である。

まさむね

上記と同じような論考は『家紋主義宣言』にもございます。←これ宣伝。

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