「迷宮物語」 よくわからないものを魅せる余裕と観る懐の深さ

1987年に公開された「迷宮物語」を観た。
これは、「ラビリンス*ラビリントス」、「走る男」、「工事中止命令」という三話のオムニバス形式のアニメであるが、第二話の「走る男」と第三話の「浩二中止命令」が、第一話の「ラビリンス*ラビリントス」の中で上映されるという、いわば劇中劇の構成をしている。

実は、僕はこのアニメを観た夜、久しぶりに何かに追い立てられる嫌な夢を観た。最近は、毎日のようにアニメを観ているのだが、こういった悪夢と出会うことはなかった。
それだけ、この「迷宮物語」は視聴者の無意識に働きかける「何か」が強いということだろうか。確定的なことが言えるわけではないが、朝起きて、そんなことを考えた。

この「迷宮物語」が怖いのは、第一話の「ラビリンス*ラビリントス」(りんたろう監督j)の構成(それと絵)ではないかと僕は考えた。以下、簡単な流れである。

最初、どこか東南アジアのヒンドゥー遺跡を思わせる大きな口の中に入っていく。
次にサーカス小屋に入っていく。
そこは、台所で、母親が夕食の支度をしているところに少女が居る。
その少女は猫とかくれんぼをしていて、猫を大きな時計の中に見つける...


そんな展開で始まる、この「ラビリンス*ラビリントス」。どこからが現実でどこからが虚構なのかが全くわからない。それがまず怖い。そして...

ある部屋に入る。そこには古い玩具がたくさんある。
部屋の中の鏡の中に入る。
その世界にはピエロが居て、ある所に誘導する。
昭和30年代を思わせる、木の塀に囲まれた細い路地をどんどん曲がりながら進んでいく。
缶蹴りの缶がどこからか転がってくる。
幽霊のような人々が沢山いる。
そして、ピエロがサーカス小屋に誘導する。
そこで、幕が開き、第二話の「走る男」と第三話の「工事中止命令」が上映される。
最後、それが終わると、サーカスは花火に包まれ、祭りのような雰囲気になる。
再び、ピエロに誘導され、何かわからない人々、動物達と一緒に隊列を組んで進む。
そして、最それらの光景が、猫と一緒に観ていた画面の中の出来事だということがわかるが、猫と画面と一緒に宇宙を飛んでいる。
最後、最初に出てきた遺跡の大きな口が閉じる...

何が怖いって、次々と「入っていく場所」がどこかよくわからないこと、そしてそこに起きる現象の脈略がないことだ。

いくら怖い物体(幽霊やモンスター等)が出てきたとしても、それが、なんらかの理由で登場するのであれば、僕はそれほど怖くは無い。
しかし、唐突に理屈も無く、場面が変り、予想もしなかった事態になるというのは怖いものだ。
しかも、結局、戻って来くる場所、つまり視聴者がとりあえず安心できる場所には帰らぬままに終わってしまう。
その宙吊り状態にされることが怖かったに違いない。

そういえば、かつては、子供が夜遅くまで遊んでいると、「サーカスやチンドン屋に連れて行かれる」から家に入りなさいと言われたものだ。
サーカスというのは、楽しい一方でどこか、子供達の不安を掻き立てる暗い部分を持っている。それはプロレスだってそうだ。自分達の知らない異界からやって来て、またどこかへ去っていく異形の人々。平地の民である僕らは、そんな異形に対して、言い知れぬ恐怖を持っているのだ。

もしかしたら、「ラビリンス*ラビリントス」は、そんな、僕の心の奥にあった恐怖心を呼び覚す作品だったのかもしれない。まるで、寺山修司の世界だ。あ~怖かった。

さて、劇中劇である「第二話」の「走る男」は、カーレースにどうしても勝ちたい男がプレッシャーの中で、マシンと一体になって、ひたすら壊れるまで走り続けるという話である。究極の欲望が人間を機械にしてしまうという話という話として僕は観た。

「第三話」の「工事中止命令」は、大友克洋っぽい作画。熱帯雨林でロボットだけが働くプラントを中止させるために乗り込んだ日本人の本社・商社マンがそこに出向くが、日に日にロボット達が狂っていくという話である。
毎日の朝食が段々壊れていくところが秀逸だ。
「MEMORIS」の第二話「最臭兵器」と近い一ネタが肥大していくという展開は、単純で面白い。

それにしても、「走る男」「工事中止命令」と比較してみても、「ラビリンス*ラビリントス」は、よくわからないが、凄いし、怖い。

おそらく、まだ1987年には、「よくわからない」ものを視聴者に魅せる余裕があったのだ。
そして、あの時代、視聴者にも「よくわからない」ものを鑑賞するだけの懐の深さがあったのかもしれない。
よくわからないが。

まさむね

この作品以外のアニメ評論は、コチラからご覧下さい。

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