「火の鳥」 宿命という言葉の残酷さ

手塚治虫の名作「火の鳥」をアニメ化した作品を一気に観た。

観た作品は、TVアニメシリーズの「黎明編」・「復活編」・「異形編」・「太陽編」・「未来編」、劇場版の「火の鳥2772 愛のコスモゾーン」・「鳳凰編」、OVAの「ヤマト編」・「宇宙編」である。
全体の印象として、原作が素晴らしかっただけに、それをアニメにすることの難しさを感じさせられた...というところか。

やはり、漫画という紙媒体では文字がそれほどうるさく感じないものも、それをアニメにした場合、どうしても説明過多になる。
逆に話をそぎ落としてしまうと、どうしても内容が薄く感じてしまう。例えば、TVアニメシリーズではトリのポジションに置かれた「未来編」であるが、クライマックスの壮大な時間の経過と、生物進化の部分。おそらく、あそこは、二回繰り返されることに意味があるのだが、それが一回に端折られていた。また、「復活編」もロビタの話がほとんどカットされてしまっていて、少し残念だ。
その中でもOVAの「宇宙編」は、もともと、この話自体が元々短いせいもあって、原作に忠実に再現されていているように思えた。宇宙の果てにある流刑星の寒々しさのインパクトは漫画もアニメも変らないなぁ。

一方、「愛のコスモゾーン」は、手塚さんご自身が監督をされているということもあってか、60年代の手塚アニメ(W3やリボンの騎士)的なミュージカル的な雰囲気がところどころにあって、画面を見ているだけで楽しかった。特に、ピンチョという犬ともカンガルーともつかぬような宇宙動物の音楽に合わせた動きが愛らしい。
この手塚アニメのミュージカル手法とでもいうべき部分は、最近のアニメにはない余裕を感じさせる。というか、これこそ手塚治虫の重要な個性なのだと改めて確信した。

さて、これらの「火の鳥」アニメ版の中で、最高のものは何かと問われたならば、やはり、劇場版「鳳凰編」を上げたいと思う。

勿論、この「鳳凰編」も原作漫画から多くの部分が端折られてはいるが、その端折り方にアニメのオリジナリティを感じさせるのである。
しかも、ト書きがその不足分を補おうとするわけではなく、逆に、説明不足なところが奥深さを出しているようにも感じた。
茜丸と我王。そして、それぞれの連れ添いの女性の悲しい運命が淡々と描かれていて、素晴らしい。
特に、後半、彫り物師となって以降、ほとんど口を利かなくなったの我王と、大仏制作プロデューサとして名声を得た後の茜丸との対比が見所である。

これは「火の鳥」だけでなく80年代以前の作品に、多々言えることだと思うのだが、人物が最初に登場した時点で、その造形や言葉遣いで読めてしまう「善悪」を、この「鳳凰編」は周到に回避しているとでも言うべきか、あるいは、さすが、86年の作品というべきなのだろうか。

さて、最後に、この「火の鳥」シリーズに登場する火の鳥に関して一言。
僕は、原作漫画で読んでいた子供の頃、そのこの火の鳥が、登場人物達のそれぞれの罪に対して科する罰の不公平さがどうも納得がいかなかった。例えば、「ヤマト編」におけるタケルの罪がほとんど免罪されるのに対して、「宇宙編」における牧村の未来永劫に科せられた罰や、猿田の先祖から子々孫々にわたって科せられた”鼻因縁”はあまりにも重いように感じられたのである。また、「未来編」の中に限っても、ロックの罪と罰に比べて、火の鳥によって不老不死にされてしまったマサトはあまりにもかわいそうではないか。

しかし、大人になって、様々な体験したり、書物などで「神の不条理」を学ぶにつれ、火の鳥の超然性(身勝手性)が理解できるようになってきた。
例えば、今回観た一連のアニメでも、火の鳥は何度も「それがあたなの宿命なのです。」というようなことを言って、登場人物を置き去りにして去っていく。(そういえば、この「~なのです。」という言い方ってそれ自体、なんとなく残酷だ。)
しかも、その一方で「生きなさい」と言う。

これら、火の鳥が発する言葉は、よく考えると、身の毛がよだつほど、残酷な言葉ではないか。
そして、この火の鳥の残酷さとは、実は、現実そのものの残酷さではないか...ということが、子供の頃には分からなかった。

しかし、今は少し分かる。幸か不幸かは別にして。

まさむね

この作品以外のアニメ評論は、コチラからご覧下さい。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中