「私のホストちゃん~しちにんのホスト~」という試み

今日は、最近ちょっと面白いと思ったテレビドラマ「私のホストちゃん~しちにんのホスト~」(テレビ朝日)について書いてみたいと思います。

このドラマは、元々、人気の携帯ゲームをドラマ化したということですが、その経緯もさることながら、作り手と劇中の世界と観る側との三者のスタンスの取り方が、今までのテレビドラマ、あるいはドキュメンタリー番組とは違う、そこが大変、面白いんですね。

簡単に言ってしまえば、今までのテレビドラマというのは、フィクションだということを断って、フィクションを行います。勿論、これは、極めて普通のことです。別に、テレビじゃなくても、映画やビデオ作品でも同じことですよね。

しかし、最近、どうもテレビドラマの人気(視聴率)が落ちています。それは、他にも多くの要因があるのでしょうが、多くの人にとって、ドラマの中の世界と現実の世界とがズレてきたというのも、その一因のように思うわけです。
別の言い方をすれば、そこに描かれている人々や物語にリアリティが見出せなくなってきている、ということなのかもしれません。

また、一方で、ドキュメンタリーや報道というのは、”本当の話”という前提で、本当のことを見せる、そして視聴者も、そう思ってみる、ということですね。
いや、”そうだった”わけですと言った方がいいかもしれません。
インターネットの普及によって、あらゆる情報が多くの人々の耳目に入ってくるに従って、「アレッ、これって確かに素材は本当なんだけど、作り手がフィクション化しているんじゃないの?」という疑問は、普通のこととして、視聴者が抱くようになってしまいました。
そんな現象を結果として後押ししたのが、いわゆる311以降の報道やドキュメンタリー番組の体たらくですよね。その結果、そこで流されている「現実」は誰も信用できなくなってしまいました。ちょっと極論かもしれませんが、僕らは、今、マスメディアに対しては本当に不審感で一杯です。

そんなメディア不審(テレビはつまらないという気分)が極限に達しているときに、その危機感に対する一つの答えとして、テレビ側が出してきたのが、今回の「私のホストちゃん~しちにんのホスト~」のドラマじゃないのか、と僕は思ってしまったわけです。ご存知の方も多いと思いますが、演出は森三中の大島さんの旦那さんでもある鈴木おさむ氏です。

まず、このドラマが他のドラマとは違うのは、始まる前に画面一杯に、「この番組はフィクションです。画面の加工・効果はすべて演出です。」と表示されるところです。普通だったら、番組の最後に申し訳なさげに表示されるあのテロップが、むしろ、その事実を誇示するかのごとく表示されるのです。

そして、それに続いて流されるのは、あたかも、”本当の”ドキュメンタリーであるかのようなナレーションとカット割り。つまり、最初のテロップが無いと、おそらく最初は、ほとんどの人は”本物”だと思ってしまうでしょう。そんな演出になっているんですね。

ただ、観ていくに従って、この世界が嘘であるということが、メタメッセージとして伝わるようになっています。つまり、「こんなのありえねぇよ」とツッコミを入れたくなるようなシーンがところどころに入ってくるのです。さらに、劇的なシーン(喧嘩や、高級酒が注文される場面)が、何度も何度も、しつこく”偶然に”カメラに収められるからです。

おそらく、今までのテレビ番組であれば、そういったツッコミはテレビの中でコメンテイターとか芸人さんが行って、視聴者は「あっここで笑うんだ」ということをご親切に教えてもらうという構造になっていたのですが、このドラマでは完全に、ツッコミを視聴者の側に委ねているという感じ、そこが非常に面白いんですね。
例えば、話の中に、シャンペンコールを考えるプロという人が出てくるんですが、その人は店特注でシャンペンコールを専門につくり、月収500万円で年収6000万円というような話が、スッと入ってくるんですね。これには誰だって、「嘘でしょ」というツッコミを入れたくなります。しかし、画面の向こうではクソ真面目にドキュメンタリーが進行しているのです。そして、たまに、歌舞伎町伝説のホストとして現実として知られているる夕聖さんなんかが出てきてインタビューに応じていたりもするわけです。

つまり、このドラマは、フィクションという前提で、本当のことと嘘とを混在してみせているわけですね。
そういえば、リアリティのある嘘というのは、嘘と本当を混在させることって、どこかで聞いたことがあります。

さらに面白いのが、このドラマが映し出してるホストクラブという存在自体が、元々、虚実の境がよくわからない夢のような現実のような曖昧な世界であるということです。ここに対象(ホストクラブ)と手法(嘘のドキュメンタリ)とが奇妙にシンクロする、この感覚がなんともスリリングだと僕は思いました。

実は、偶然でしょうが、昨日(11月6日)、昼間にフジテレビで「浪花の人情ホスト」というホストのドキュメンタリー番組が、古い手法のまま放送されていて、僕は思わず、両者を比較して観てしまいましたね。

残念ながら、「浪花の人情ホスト」の方は、「ホストという仕事をしているどうしようも無い若者も、実は人情味溢れるいい奴」という凡庸な物語が、ドキュメンタリでありながら透けて見えてしまっていました。
勿論、男二人が服を着たまま、川の中で相撲を取り、友情を深めるというシーンなど、フィクションとしては泣かせる場面もあるのですが、所詮、ホストクラブの「宣伝(パブリシティ)」なんでしょ、という意識を僕は、意地悪にも持たざるを得なかったのです。
しかも、彼らを撮影しているスタッフは、一切姿を現さないという、これはこれで、当然の手法なのですが、そこが、「私のホストちゃん~しちにんのホスト~」を観た直後だと、どうにも偽善的に見えてしまう、これはある種の残酷な現象だなぁと僕は思うわけです。

まぁ、言葉では本当にわかりにくいと思いますので、興味のある方は是非、コチラからご覧下さい。

言い忘れましたが、このドラマのもう一つの大きな特徴は、テレビ局自身がYOUTUBEでオンデマンド配信しているということですからね。この勇気と、実験精神にはとりあえず、拍手を送りたいと思います。

まさむね

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