諸星大二郎の「暗黒神話」で沸き起こった福島第一原発事故にまで連なる不謹慎な連想

先日、友人のI君に諸星大二郎の「暗黒神話」を借りて読みました。

この漫画は、記紀からはじまり、古代史、邪馬台国神話、民間伝承、仏教説話、そしてしまいには、天文学をも巻き込んだ壮大なSF物語です。
諸星先生自身もこの作品について「緻密で壮大なジクソーパズルをしてみたかった」と言われていたということですが、まさにこの「暗黒神話」は、それらの膨大な歴史文書から抜き取られた様々なピースが諸星大二郎の頭脳の中で、強引かつ、奇跡的に一枚絵に組みあがったような作品なのです。

話の大きな枠組みとしては、一人の普通の少年が、未知の異世界に巻き込まれてゆく、というSFとしてはよくあるパターンなのですが、そのスケールの大きさと、ネタの豊富さが凡百の物語を完全に凌駕しています。おそらく、この作品を書くにあたっては、その構想に相当な時間を必要としたのではないかと想像されます。とにかく凄すぎます。

そして、さらに驚くのは、この漫画が最初に連載されたのが週刊「少年ジャンプ」(1979年)だったということです。読者層が、小学生高学年から、せいぜい大学生位の少年誌に、堂々とこんな複雑怪奇な漫画が連載されていたということですから。

勿論、小学生が読んだとしてもその全貌はつかめないと思われるのですが、それでも「ここに描かれていることは何だか凄い!」という感覚はつかめるでしょう。
この感覚は、「自分は今は知らないけど、なんだかこの日本(世界)には大きな謎があるに違いない!」という感覚に近いかもしれません。

そして、この漫画を読んだ子供達が、その感覚を元にして歴史や日本文化に興味を持ち、徐々に知識を得ていくということもありえるでしょう。さらに、ある程度、勉強した段階で、再読してみて、さらに感激する...そういった読者の成長に合わせて何度でも読み返せる作品、それがこの「暗黒神話」だと僕は思います。

つまり、この漫画の中に潜む様々なネタ元を、読者が自分なりに想像してみるという楽しみこそ、この物語の醍醐味ではないでしょうか。
例えば、主人公の山門武が、様々な場所で身体に受ける聖痕(スティグマ)は、「平家物語」にも登場する緒方惟栄(この物語にも緒方家が出てきます)の身体にあったという蛇の鱗の痣を想像させます。また、その武が八つ聖痕(スティグマ)を身体に刻んだとたんにオリオン座に存在する馬頭星雲に近づき、ブラフマンと一体化して、その「天の馬」を自由にあやつる超能力を与えられるという展開は、平将門が乱を起こしたときに、天から七つの星が降って来て黒馬となり祝福したという話とどこか繋がっているようにも思われるのです。

また、SF関連の影響か?というシーンで言えば、弟橘媛がカプセルから蘇った途端に体が崩れてしまうシーンは、手塚治虫の「火の鳥(未来編)」で猿田博士が作った生命維持装置から外に出た途端に溶解してしまう人造人間・アダムの姿と酷似していますし、56億7千万年後の地球に戻ってきた武が、石の馬とそれに群がる餓鬼を見て、そこが地球だと認識するという設定は、地球に帰ってきた宇宙飛行士が、砂に埋まった自由の女神を見て、そこが地球だとわかる、あの「猿の惑星」の衝撃のラストシーンを思い出させます。

さて、これはある種の都市伝説なのかもしれませんが、最近の子供達の間では、小説を読むなんていうのはトンでもない、それどころか、漫画を読めることが、「頭のいい子」ということになっているといいます。
でも、このような活字、あるいは漫画離れ現象というのは、実は、漫画作品自体が発する「よくわからないけど、何か凄いという」オーラというものが減ってきているというのも原因のひとつなのではないでしょうか。この「暗黒神話」を読んでそんなことが想像されました。

また、良作に出会った時に感じるオーラのもう一つの機能は、それによって読者が、自分でも同じようなモノを描いてみたくなる衝動を沸き起こすことだと思います。あるいは、そこまで行かなくても、その物語が持つ求心力が、読者それぞれの頭の中に、次々と別の連想を沸き起こさせるということです。

例えば、この物語で重要な役割を果たすのがスサノウなのですが、そのスサノウ繋がりで言えば...

スサノウを祭神としている八坂神社の神紋である五瓜紋は、織田信長の紋でもあるので、信長の超人的な力もスサノウの力を体現していたのではないか?とか...
八坂神社は、秦氏の氏神、その秦氏が奉ずる広隆寺の元々の本尊であった弥勒菩薩は、まさに56億7千万年後の武の姿ではないか?とか...
さらに、その広隆寺の牛祭の祭神である摩多羅神の象徴である茗荷紋は、秋山真之、村山槐多、水木しげる、三島由紀夫、角川春樹、北野武の家紋だから、彼らも物語に動員出来るのではないか?とか...

さらに、メチャクチャついでに...

例えば、先ほど上げた緒方惟栄の蛇の鱗の痣の話は、その後、緒方家に広く伝承される三つ鱗紋に結びつき、さらにさかのぼれば、三輪山の大物主(蛇神)にも行き着きますが、その蛇神の怒りが台風12号@2011を起こしたのではないのか、とか...
さらに、黒馬の話は、将門の子孫(と称する人々)、特に相馬家の繋ぎ馬紋と結びついてしまいますが、その相馬一族の本拠地(旧相馬藩)にあったのが、あの福島第一原発で、その現状はまるで、放たれた暴れ馬のようだったり、とか...

そんな、不謹慎で身勝手な連想が頭の中をかけめぐったりもしてしまうのです。

いずれにしても、こういった頭の中をかき乱すような漫画こそ、豊潤と呼ぶにふさわしいと僕は思います。
多分、しばらくは、「暗黒神話」の呪縛から離れられそうにありません。

まさむね

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